屋外タンク貯蔵所
燃料や材料になる原油やガソリン、灯油などを貯蔵するために色々な形の貯蔵施設があります。その中でも最も一般的ですがなかなか奥の深い屋外タンク貯蔵所のうち点検周期の忘備録的な箇条書きです。
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特定屋外タンク貯蔵所の保安検査と内部点検
特定タンク貯蔵所には容量により「保安に関する検査」(以下[保安検査])と「内部検査」が義務付けられています。
屋外タンク貯蔵所の開放点検
特定屋外タンク貯蔵所の供用中検査では確認できないタンクの内部の底板部の厚さ測定や底板部などの溶接部の状況についてタンクを開放し点検することが義務付けられています。これを「開放点検」と言います。この「開放点検」を大別すると「保安検査」と「内部点検」に分けることができます
・保安検査
消防法第14条の3第1項において、特定屋外タンク貯蔵所の所有者等は市町村長が行う「保安検査」を受けなければならないとされている。
消防法第14条の3第1項の一般に「定期保安検査」と呼ばれるものと
消防法第14条の3第2項に規定される「臨時保安検査」と呼ばれるものがあります。
【参照法令】
消防法第14条の3(保安検査及びその審査の委託)
危険物に関する政令(危政令)第8条の4(保安に関する検査)
平成6年政令第214号附則
・定期保安検査
定期保安検査は容量1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所の所有者等に義務付けられるもので新法、新基準(第2段階基準)、第1段階基準といったタンクの構造上の安全レベルに応じ定められた基本開放周期毎にタンクを開放し底部の板の厚さ及び溶接部が技術上の基準に従って維持されているか市町村長等が検査を行うものです。
・臨時保安検査
全ての特定屋外タンク貯蔵所において直径に対する不当沈下の割合が100分の1以上になった場合タンクの所有者等に義務づけられていて、当該タンクを開放し、定期保安検査と同じ内容について市町村長等が検査を行うものです。
・内部点検
危険物の規制に関する規則(危規則)第62条の5において、容量が千キロリットル以上1万キロリットル未満の特定屋外タンクの貯蔵所の所有者等は内部点検を行わなければならないとされていています。内部点検は、定期保安検査と同様に、新法、新基準(第2段階基準)、第1段階基準となどのタンクの構造上の安全レベルに定められた基本開放周期毎にタンクを開放し底部の板の厚さ及び溶接部が技術上の基準に従って維持されているかどうか屋外タンク所有者等が自ら点検を行うものです。
【参照法令】
危規則第62条の5
平成12年自治省令第11号附則
開放周期
特定屋外タンク貯蔵所の内部典型制度は昭和51年に規定されました。これは昭和49年に発生した瀬戸内海の油流出事故を受けたものです。昭和51年当時特定屋外タンク貯蔵所のうち容量1万キロリットル以上のものは5年に1回、1万キロリットル未満のものは10年に1回の内部点検が義務付けられました。 翌、昭和52年に屋外タンク貯蔵所の保安に関する技術基準の全面見直しが行われ、容量1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所に保安検査制度が規定され、10年に1回の保安検査が義務付けられました。この時点で容量1万キロリットル以上のタンクは5年に1回の内部点検が義務付けられていたため、5年毎にタンクを開放し内部点検と保安検査を交互に実施することとなりました。 平成6年に容量1万キロリットルの屋外特定タンク貯蔵所についての内部点検制度が廃止され、保安検査のみとなり、また新法、第1段階基準、新基準といった構造上の安全レベルに応じた周期に見直されました。 平成12年に容量1万キロリットル未満の特定屋外タンク貯蔵所の内部点検時期もタンクの構造上の安全レベルに応じた周期に見直されました。 容量千キロリットル未満の屋外タンク貯蔵所については開放周期の規定がありませんが、これは開放周期を自主的に決定できるということです。一般的に開放周期の規定のない容量の小さなタンクは開放周期のある大きなタンクより薄い鋼板でつくられています。
屋外タンク貯蔵所の開放周期【参照法令】 | ||||
制定時期 | 改正経過 | 1万キロリットル以上 | 千キロリットル以上1万キロリットル未満 | |
内部点検 | 保安検査 | 内部点検 | ||
昭和51年 | 内部点検制度が制定された | 5年 | 未制定 | 10年 |
昭和52年 | 1万キロリットル以上に保安検査制度が制定された | 改正なし | 10年 | 改正なし |
平成6年 | 1万キロリットル以上の内部点検廃止保安検査時期見直し | 廃止 | 7~8年 | 改正なし |
平成12年 | 内部点検時期の見直し | ─ | 改正なし | 12~13年 |
屋外タンク貯蔵所の開放周期【参照法令】 | |||||||||
1万キロリットル以上の特定屋外タンク貯蔵所 | 千キロリットル以上1万キロリットル未満の特定屋外タンク貯蔵所 | 準特定屋外タンク貯蔵所 | 特定及び準特定屋外タンク貯蔵所以外の屋外タンク貯蔵所 | ||||||
基本 | 個別延長周期 | 基本 | 個別延長周期 | ||||||
旧法 | 5年
(保安検査と内部点検を交互に繰り返す) |
10年
(内部検査) |
開放点検時期の
基準はない |
||||||
新基準
(第2段階 基準)
|
7年
(定期保安検査) 【平成6年政令第214号附則第3項】
|
エポキシ系
コーティング等 |
8年
(1号措置) |
12年
(内部点検) 【平成12年自治省令第11号第2項】 |
エポキシ系
コーティング等 |
13年
(1号措置) |
|||
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
9年
(2号措置) |
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
14年
(2号措置) |
||||||
ガラスフレーク
コーティング等 |
10年
(1号措置) |
ガラスフレーク
コーティング等 |
15年
(1号措置) |
||||||
第1段階
基準
|
8年
(保安検査) 【危政令第8条の4第2項第1号】 |
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
10年 | 8~15年
(2項措置) ※1 |
13年
(内部点検) 【-】 |
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
15年 | ||
ガラスフレーク
コーティング等 |
10年 | ガラスフレーク
コーティング等 |
15年 | ||||||
貯蔵管理者等の有効な措置+ガラスフレークコーティング等 | 13年
(3号措置) |
貯蔵管理者等の有効な措置+ガラスフレークコーティング等 | |||||||
新法
|
8年
(定期保安検査) 【危政令第8条の4第2項第1号】 |
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
10年 | 8~15年
(2項措置) ※1 |
13年
(内部点検) 【危規則第62条の5第1項】 |
貯蔵管理者等の
有効な措置 |
15年 | ||
ガラスフレーク
コーティング等 |
10年 | ガラスフレーク
コーティング等 |
15年 | ||||||
貯蔵管理者等の有効な措置+ガラスフレークコーティング等 | 13年
(3号措置) |
貯蔵管理者等の有効な措置+ガラスフレークコーティング等 | |||||||
1号措置・・・危規則62条の2の2第1項第1号に規定
2号措置・・・危規則62条の2の2第1項第2号に規定 3号措置・・・危規則62条の2の2第1項第3号に規定 2項措置・・・危規則62条の2の2第2項に規定 ※1底部全面連続板厚測定を実施し、その結果等から求められる年数 |
検査すべき項目
内部検査及び保安検査にて検査すべき項目として、底部の厚さに関するものと溶接に関するものが定めれれています
底部の厚さに関する事項
・板厚測定方法
-
定点測定
昭和52年消防危第56号にて示されているが、現在の主流は昭和54年消防危第169号通知で示された箇所。
-
連続測定
底部全面を30㎜以下の間隔で測定する方法
定点測定の通知別板厚測定箇所 | ||
部位 | 昭和52年消防危第56号通知 | 昭和54年消防危第169号通知 |
底板 | ・板1枚当たり3点以上 | ・概ね1mの間隔 |
アニュラ板 | ・側板内側から0.5mの範囲を2m以下の千鳥
|
・側板内面より500㎜の範囲を概ね100㎜の間隔で千鳥
・内面腐食の見られる箇所 ・その他の部位を概ね1mの間隔 |
その他 | ・アース・ドレン部分を概ね0.3mの間隔
・腐食の認められる箇所
|
・アース・ドレン部分を概ね100㎜の間隔
・設計板厚の90%以下の値が測定された箇所については当該箇所を中心にして半径300㎜の範囲を概ね30㎜の間隔にて測定 |
・板厚基準
タンク底部の板厚の基準はタンクに適用される基準や測定方法、また各市町村長によって異なる場合がありますので注意が必要です。
危険物保安技術協会による基準 | ||||
区分 | 部位 | 法令上の基準 | 補修要件 | |
定点測定 | 連続測定 | |||
新法 | アニュラ板及び
アニュラ板相当部底板 |
・危告示第4条の17の最少厚さ以上
・危告示第79条の保有水平耐力を満足する厚さ以上 |
平成11年消防危
第58号通知 |
平成14年消防危第17号通知により改正された平成12年消防危第93号通知 |
底板 | ・危告示第4条の18の最少厚さ以上 | |||
新基準 | アニュラ板相当部底板 | ・3.2㎜以上
・危告示第79条の保有水平耐力を満足する厚さ以上 |
平成26年消防危
第146号通知 |
|
底板 | ・3.2㎜以上 |
溶接部に関する事項
・試験方法
タンク底部の溶接部の試験は下記方法にて試験されます。
-
磁粉探傷試験
タンクの底部溶接部検査では一般的に極間法・蛍光湿式磁粉(分散媒:水)が適用されます。場合によりその他の方法が適用される
-
浸透探傷試験
危規則第20条の8にて磁粉探傷試験によることが困難な場合、また磁粉探傷試験の結果、磁粉模様の長さがその幅の3倍未満のものについては浸透探傷試験により指示模様の確認を行うとされています。
・試験実施箇所
施行範囲は昭和52年消防危第56号通知に示されているが、近年では底部溶接線全線を試験する事業所が大半です。
・試験基準
危険側第20条の8による基準を満足する必要がある。
-
磁粉探傷試験
・割れのないものである。
・アンダーカットはアニュラ板×底板及び底板×底板の溶接継手については0.4㎜以下その他の溶接継手についてはないものであること
・磁粉模様は長さが4㎜以下であること。2以上の磁粉模様がほぼ同一線上に2㎜以下の間隔で存在する場合当該磁粉模様の長さと当該間隔の合計の長さとする。ただし相隣接する磁粉模様のいずれかが長さ2㎜以下のものであって当該磁粉模様の長さ以上の間隔で存在するものを除く
・磁粉模様が25㎠の長方形(一辺の長さ15cmを限度)の部分に長さ1㎜を超える磁粉模様の長さの合計が8㎜以下であること。
-
浸透探傷試験
・割れがないものである。
・指示模様は長さが4㎜以下であること。2以上の支持模様がほぼ同一線上に2㎜以下の間隔で存在する場合当該指示模様の長さと当該間隔の合計の長さとする。ただし相隣接する指示模様のいずれかが長さ2㎜以下のものであって当該指示模様の長さ以上の間隔で存在するものを除く
・指示模様が25㎠の長方形(一辺の長さ15cmを限度)の部分に長さ1㎜を超える指示模様の長さの合計が8㎜以下であること。
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