標準的なプラント配管の製造ステップ
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なぜ手順や工程が必要なのか
プラントや施設、設備などの配管や機器は製造され顧客に引き渡されるまで多くの手順を踏んで制作されます、一つ一つ手順を正しく踏みそれらを随時確認することで初めて安全で要求通りの製品として完成します。また、各手順毎にチェックや確認を実施することで見落としや間違いがあった場合に素早い処置を施すことができます、そしてチェック内容や確認した内容を記録として残すことによって今後の改善への資料となり、もしも不具合や事故が起こった場合に原因がどこにあるのかを探る大切な資料にもなります。手順を覚え実践するのは大変ですが各手順にはその道のプロがいるので一つ一つクリアすることはそう難しくないと思います。
実際の手順について
プラント配管の製造は概ね下記手順で行われます、各ステップの確認は現物や書類でQC(品質管理担当者)やQA(品質保証担当者)が行い顧客との立会などの確認や報告書などの書類を提出します。また、途中で不具合があった場合には要求仕様や事前に決められた手順に則り是正されます。
- 配管設計
- 材料の調達
- 材料の受け入れ検査
- プレファブ加工
- 溶接部の熱処理
- 非破壊検査
- 据付
- 現地溶接、組み付けなど
- 溶接部の熱処理
- 非破壊検査
- ラインチェック
- 耐圧試験
- 気密試験
- 化学洗浄
- フラッシング
- 試運転
- 引き渡し
上記工程は一般的なプラント配管の製造工程を示します。手順1.~3.までは概ね準備段階ともいえる設計調達の部門。4.~6.は工場や内作場と呼ばれる環境が整った場所での作業で「プレファブ」や「ショップ」と言われる工程です。7.~10は実際に配管が取付く現地にて作業される「フィールド」や「現地組み」と言われる工程となり、11,以降は「総合試験」と言われる配管や取り付けられた機器などが安全に且つ性能要求通りに作られていることを確認する工程となります。
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配管設計
配管の設計は通常流体や距離・圧力・外的要因(地震などの自然災害や環境)に応じて設計仕様が決められその仕様に基づき行われる。
作成される主な図書
名称 | 説明 |
配管仕様書
(標準仕様書) |
配管の設計や材料調達、製造、据え付けを行う上で守るべき法令や法規・規格や標準、クラス、ランク、遵守・禁止事項をまとめた図書 |
購入仕様書 | 設計に合わせ材料の調達に必要な法令や規格、遵守事項や禁止事項、注記事項をまとめた図書 |
要領書 | 配管の製造や据え付けに当たり仕様書に基づき法遵守事項や禁止事項、使用する機材などをまとめた図書 |
手順書 | 要領書の一部の要素を作業の順番に詳細に表した図書 |
作成される主な図面
名称 | 説明 | 備考 |
P&ID | 配管系統図と言い機器間の流れや配管の仕様などを記号化した基本図 | Piping&Instument Diagram |
プロットプラン | 平面図と言いプラント内の機器、架台、主要配管概略のルートや建屋配置などのもっとも基本的な図面 | 平面図:Plan Drawing
立面図:SideView Drawing |
アイソメ図 | QCアイソメとも言い立体配管図 | |
スプール図 | 配管制作図、部分組み立て図 | Spool Drawing |
その他の各制作図 | サポートや架台などのそれぞれの制作図 |
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材料の調達
材料の調達は設計の仕様をもとに購入仕様書が纏められ、それらの要求事項に合わせ設計に適合した材料を使用数量及び予備数量を含めた必要数量を購入する。
購入者による立会や必要な書類等の提出要求を事前に取り交わされた購入仕様書や契約内容に合わせ実施する。
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材料の受け入れ検査
調達された材料は購入仕様書の通りの材料が使用され、また寸法や形状が適合しているものが必要個数あることを確認する。
確認する項目として
- 材料の形状、寸法や表示されるべき内容がステンシルや刻印等で正しく表示されている。
- 材料のミルシートや試験検査成績書が必要な内容を網羅し結果が正しく記載されている
- 破損や汚れなどが無いこと
- 形状や寸法に間違いがないこと
- 必要数量が揃っていること
工場や内作場などの環境が整った場所での制作作業
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プレファブ加工
材料の切り出しや加工、溶接などの接合作業がここに含まれます。
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溶接部の熱処理
材料や加工方法により熱処理が不要な場合があります。その場合は次のステップへ進みます。
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非破壊検査
加工された材料や接合部などの健全性を非破壊検査(場合や製品によっては採取した試験片での曲げ試験や引張試験などの破壊試験も実施)により製品の健全性を確認する。
上記4.5.6にて確認する項目として
書類や材料などについて
- 要領書や手順書、指示書などの最新図書が揃っていること
- 製作図やカッティングプランなどの図面の最新版が必要数揃っていること
- 使用する機材が正しいものが準備され、点検が行われている
- 計測器など定期的に校正が必要なものは有効期限内のものであること
- 校正証や資格証などの書類が正しくそろっている
- 配管や材料が計画通り揃っている
人員や資格など
- 有資格者であることを書類、資格証などで確認する
- 要領書などの人員名簿に登録されていること。
- 作業に対する知識、経験が十分あること(書類等で事前確認)
作業内容など
- 配管や材料がカッティングプラン通りに加工されている
- 配管の開先面が図面や仕様通り整っている(PE、BE)
- 開先合わせが作業指示通り行われている(溶接機、溶接師、溶接棒、形状や部材の組み合わせ)
- 開先形状が要領通りの許容値内である
- 溶接後外観寸法が許容値内である
- 非破壊試験の結果が良好である
出荷前に確認する内容
- 配管が正しく作られている (寸法や形状、向き、使用された材料など)
- 配管材料や溶接部が汚れていない(溶接焼けの除去がなされている)
- 管端養生や梱包が正しくされている
- 現地へ発送するための許可証や明細書、検査記録などが揃っている
- 配管内部に異物が残っていない
現地での制作作業
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据付
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現地溶接、組み付けなど
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溶接部の熱処理
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非破壊検査
項目7.8.9.10.で確認する項目として
書類材料など
- 要領書や手順書、指示書などの最新図書が揃っていること
- 製作図や組み立て図などの図面の最新版が必要数揃っていること
- 使用する機材が正しいものが準備され、点検が行われている
- 計測器など定期的に校正が必要なものは有効期限のものであることの確認
- 校正証や資格証などの書類が正しくそろっている
- 配管や材料が計画通り揃っている
人員・資格など
- 有資格者であることを書類、資格証などで確認する
- 要領書などの人員名簿に登録されていること。
- 作業に対する知識、経験が十分あること(書類等で事前確認)
- 作業所特有のルールや周辺環境などを理解している
作業など
- 配管や材料がプレファブ加工の計画通りに加工されている
- 配管の開先面が図面や仕様通り整っている(PE、BE)
- 開先合わせが作業指示通り行われている(溶接機、溶接師、溶接棒、形状や部材の組み合わせ)
- 溶接後外観寸法が許容値内である
- 非破壊試験の結果が良好である
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ラインチェック
配管施工後(場合により施工中も)、耐圧試験などの総合試験の前に実施され、系統が正しく結ばれていることや使用材料に不備が無いこと、機器などの向きが正しく接続されていることなどを確認する
確認する項目として
- 配管材料の確認 ステンシルや刻印、鋳出し文字、識別表示により材料が正しいことを確認する
- P&IDとの照合、ライン上の機器や計器などの取り付けが指示通り行われている
- 操作性やアクセス性の確認
- メンテナンス性の確認
- サポートや金物が取り付け図通りの位置でかつクリアランスが確保されている
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耐圧試験
ラインチェック後、計画通り制作されている配管や機器が最高使用圧力での使用が可能であることの確認。水圧や気圧にて圧力をかけ最高使用圧力の1.25倍~1.5倍程度(法令や規格、仕様により様々な規定がある)を加圧し実施する。
確認する項目として
- 耐圧試験計画通りのラインナップがされていること
- 耐圧試験用の加圧源や媒体に相違がなく、また異状がないこと
- 人員の配置や緊急時の連絡体制、準備がなされていること
- 立ち入り禁止措置や周辺への連絡がなされていること
- 圧力確認用の圧力計など必要機器の校正や調整がなされていること
- 圧力上昇中に、異常降圧、配管や機器の変形、異音、漏えいなどがないこと
- 規定の保持時間を経過し耐圧試験結果が良好であること
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気密試験
耐圧試験後(耐圧試験と同時に実施する場合もある)配管や機器に漏えいが無いことの確認
確認する項目として
- 気密試験計画通りのラインナップがされていること
- 気密試験用の加圧源や媒体に相違がなく、また異状がないこと
- 人員の配置や緊急時の連絡体制、準備がなされていること
- 立ち入り禁止措置や周辺への連絡がなされていること
- 圧力確認用の圧力計など必要機器の校正や調整がなされていること
- 圧力上昇中に、異常降圧、配管や機器の変形、異音、漏えいなどがないこと
- 規定の保持時間を経過し気密試験結果が良好であること
- 化学洗浄
必要に応じ、配管内外を洗浄する方法は施行要領書に規定された方法で実施する。
洗浄後、塗装やマーキングなどを実施する。
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フラッシング
必要に応じ要領書などに規定された方法で実施する。
-
試運転
必要に応じ要領書などに規定された方法で実施する。
-
引き渡し
顧客へ引き渡されるまでに最終報告書や完成図などの完成図書を納入し製品として引き渡しが実施される。
最後に・・・
おおよそここまでの流れが標準的な配管製造の手順化かと思いますが、製造する配管の適用される流体や適用される法令・規格などで今回紹介していない手順が入ったり、もしくは今回の説明で網羅しきれない内容が入る場合があります。実際の製造手順はそれぞれの要求仕様を確認した上で要領書や手順書、図面などで確認して頂けると幸いです。
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